カレンダーガール


「あなた」
母親の顔が固まった。

「お父さんですか?」
川上先生が冷静に聞く。

「はい。どうもお世話になります」
一見サラリーマン風の、きちんとした身なりの男性。

「今から検査です。結果が出たらお話ししますので」
私は父親を待合へ案内しようとした。

しかし、

「旭、もう大丈夫だろ?」
いきなりの父親の問いに、
「う、うん」
旭君は明らかにおびえている。

「本人も大丈夫だと言ってますし、今夜は連れて帰ります。様子を見て調子が悪ければまた来ますから」
それだけ言うと父親は出て行こうとする。

「待ってください。まだ診察中です」
さすがに、川上先生が止めた。

まだ検査もしていないのに帰すわけにはいかない。
そもそもこの親子はどこかおかしい。

「そんなこと言って、無駄な検査をしてお金を取ろうとしているんでしょう?」
穏やかそうな顔をしながら、随分辛辣なことを言う父親。
どんなことをしてでもここから旭君を連れ出したいと、態度から見てとれる。
これって、もしかして・・・

「旭君、検査に行きましょう」
私は診察用の椅子に座っていた旭君を抱きかかえ立ち上がった。