10月の終わり。
救急当直も4週目で、週末の勤務も今日で終わる。

「桜子、夜食のカレーはチキンでいいの?」
結局、救急当直に付き合うこととなった紗花が聞いてきた。

「うん。チキンでいい。紗花は?」
「ポークカツ大盛り」
「はいはい。好きにして」
どうせ私のおごりだから。

明日鷹先生が仕組んだペナルティーの救急当直。
断わるチャンスもあったけれど、私も紗花も勤務に就くことにした。
当直をどうするかと聞かれた紗花は、
「悔しいから、救急の当直はします」と答えたらしい。
そして、
「夜食は桜子がおごりなさいよ」
と言った。
いかにも紗花らしくて、私は笑ってしまった。

救急外来では、夜勤のスタッフが近くの店から夜食の出前を取ることが多い。
もちろん忙しい時にはそんなこと言っていられないけれど、落ち着いていればカレーや中華や弁当などいろいろなものを注文する。
ただ、救急には色々なジンクスがあって・・・
出前を頼むと急患が来るとか、「今日は暇だ」と口にすると患者が立て込むとか、これが結構高確率で当たるから不思議だ。
さあ、今夜はゆっくりカレーが食べられるといいな。