今日から勤務するのは消化器内科。
主に食道から直腸までの消化管を扱う内科で、その中心が胃カメラや大腸カメラなどの内視鏡。
その検査を行うのがここ内視鏡室で、大きな部屋の中に小さく仕切られたいくつもの検査室がある。
入り口近くにはトイレと処置スペースがあり、奥の休憩室にはベットが並んでいる。
外科医が手術の数で評価が決まるように消化器科医は内視鏡の腕前が評価されるから、どうしてもここにいる時間が長くなるはず。
ちなみに、内視鏡のカメラは精密機器のため他の部屋よりも空調が効いていて、少し寒い。

「鈴木先生、名前はなんていうの?」
検査着に手を通しながら、森先生が声をかけてきた。

えっ。
「さくらこ、です」
若干の後ろめたさがある分、つい身構えた。

「僕は、森明日鷹(もりあすたか)と言います。明日鷹先生と呼んでくれたらいいから」
「あすたかせんせい?」
「そう。今日は見学のつもりで見ておいて」
そう言うと、明日鷹先生は検査に入っていった。