「いらっしゃいませ」
中からドアが開いて、招き入れられたブティック。
ここはブランド品を多くそろえた、有名なセレクトショップだ。

「こんにちは」
「紗花さん、桜子さん、お久しぶりです」
紗花が事前に連絡していたらしく、店のオーナーが笑顔で迎えてくれる。

店内にはすでに紗花と私用にセレクトされた洋服達が、並べられていた。

すすめられるままに試着を繰り返す私達。
紗花用にはシフォン素材の柔らかなスカートとブラウス。
私には、夏に向けて重宝しそうな綿素材のパンツに、膝丈スカート、着回しのきくカットソー。
学生の頃のようにキャアキャア言いながら服や小物を選び、最終的にスーツも2着ずつ加えて2人ともかなりの枚数になった。

「これでお願いします」
紗花がパパから預かってきたゴールドのカードを差し出す。

実は、私と紗花の間には秘密がある。
紗花のパパ、和泉大悟(いずみだいご)は建設業を営む実業家。
そして、その人は私の生物学上の父でもある。
こんな風に言うととっても複雑な家庭環境に聞こえるけれど、意外とシンプル。
私が5歳の時母さんと別れた父さんが、2年後紗花のママと再婚した。
つまり、私たちは血のつながらない姉妹なのだ。

中学の入学式で初めて会った私たちは、当然お互いを知っていた。
特別意識したわけでもないけれど、一緒にいるうちになんとなく気があって仲良くなった。
母さんも紗花のママも、今では普通にママ友している。
さすがに父さんは居心地悪そうだけど・・・
そんな経緯があって、大学に入った頃から紗花と買い物に行くときは父さんのカードで支払ってもらうのが慣例になった。
父さんに言わせれば、養育費の代わりだそう。