新年。

「おはようございます。おめでとうございます」
「おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
行き交う看護師達が声をかける。

大晦日に当直勤務だった私は、新年を小児科病棟で迎えていた。
さすがに元旦だけあって、小児病棟も静まりかえっている。
入院患者のうち軽症の子は年末のうちに退院し、長期の子も落ち着いていれば外泊して自宅に帰る。
今残っているのは比較的重症の子や救急から緊急入院になった子供達。
中には生まれてから一度も病院を出たことのない子もいる。

小児病棟でも、子供達に少しでも正月気分が味わえるようにと正月らしい飾り付けをしたり書き初めをしたりと、工夫を凝らしている。

「桜子先生。師長が夜勤者用におせちとおそばの差し入れをくださったので、良かったらどうぞ」
と、元旦から勤務の病棟看護師。

「師長がですか?」
「はい。毎年、元旦に届けてくださるんです。先生、朝食がまだならどうぞ」
「ありがとうございます」
笑顔に促されて、休憩室へ向かった。