自分では、啓介のことを整理したつもりだった。
だから、今回の果歩先生のことも平気だと思っていた。
でも、思っていた以上にトラウマは残っていたようで・・・

「桜子」
声とともに肩をポンと叩かれ、
「キャッ」
思わず声が出た。

「ど、どうしたの?」
声をかけた紗花も不思議そうに見ている。
「大丈夫。ちょっと驚いただけ」
何とか誤魔化した。

いつものように、社員食堂で紗花と向き合って座るランチタイムの時間。

「小児科の研修医が、無断欠勤して皮膚科に異動になったって?かなり評判の悪い子らしいわね」
日替わりのオムライスをつつきながら、紗花が言い出した。

「紗花でも評判なんて気にするのね。それを言ったら、去年の私たちだってきっと評判の悪い研修医だったと思うわよ」
嫌味を言うつもりは無いが、果歩先生の話は気が乗らない。

「まあ、それもそうね」
紗花もこれ以上話を広げる気なないらしい。