カレンダーガール

小児科医はいつも忙しい。
点滴、処置、処方、診察。その合間を見つけて、カルテ整理や診断書の作成もする。

「301の雪ちゃんが便秘気味なので、お薬の変更をお願いします」
担当看護師からの依頼。
「はいはい」
私はカルテを確認し、処方を追加する。

その時、
ガチャン!
何かが落ちて割れる音。

私も音のした方を見る。
そこには、真っ青になった果歩先生の姿。

「大丈夫?」
思わず駆け寄り、声をかけた。

「だ、大丈夫です」
言いながらも、果歩先生の目は虚ろ。

「大丈夫です。もう一度検査指示を出します」
猛然とパソコンに向かい、検査指示を出そうとしている。

でも、さっき割れた中身は陽菜ちゃんの骨髄液。
簡単には再採取はできない。

「私が保護者に話そうか」
さすがに、研修医に任せるわけにはいかないかも、そう思って声をかけたが、
「結構です。自分で話します」
飛び出していく果歩先生。
その後ろ姿にとても嫌な予感がするけれど、とりつく暇がなかった。

しかし、嫌な予感は的中するもの。

しばらくして、
「桜子先生。大変です」
看護師のめぐみさんが、駆け足で戻ってきた。

「どうしたの?」
ただ事ではない慌て様。
「果歩先生が、陽菜ちゃんのお母さんともめてます」
「え、本当に?」
「お母さん凄い剣幕で、果歩先生では無理です」
めぐみさんも動揺している。

「分かった。私が行くから。剛先生に連絡しておいて」
そう言うと、私は陽菜ちゃんの病室に向かった。