11月。

今年もインフルエンザの季節が到来。
突然の高熱と全身の痛み、ぐったりする子供達を心配そうに見守るお母さん。
うちの病院でもチラホラと患者が目立つようになった。

「桜子先生。今日から発熱外来が始まるからね」
今日の外来担当の剛先生が声をかける。
「はい。よろしくお願いします」
私も手順マニュアルを再度確認して、マスクを装着。
よし、これで準備OK。

この季節になると設置されるのが発熱外来は、主にインフルエンザなどの感染症の患者が対象になる。
問診の時点で、発熱や節々の痛み家族の罹患歴があれば発熱外来へのトリアージとなる。
今日の私は、発熱外来へ来た子供達の診察と検査を担当する。

「状況を見て重傷者は救急外来へ、発熱のない子は出来るだけ一般外来へふって」
「はい」

一緒に外来に入る山田先生のアドバイスを頭に入れて、診察に向かう。
しかし、9時に始まった外来は1時間も経たずに患者で埋まり、40席ほど用意された席もすでに患者達であふれている。

「検査キット、足りますか?」
担当するスタッフも心配そう。
「院内にストックがあるようなら取り寄せて。とりあえず、今できることをしましょう」
私も自分自身に言い聞かせる。

「先生。検査お願いします」
「はい」
検査キットを患者の鼻にあてがい、グリグリ。

わーーわーーん。
当然、大泣きされる。

「ごめんね。もう終わるからね」
それでもなだめながら、検査をするしかない。

「15分ほどで結果が出ますので、待合でお待ちください」
大泣きした子はお母さん抱かれて待合に戻っていった。