紗花の結婚式から数日後。

「ちゃんと主婦しているの？」
久しぶりに、社員食堂でランチを共にする紗花に聞いてみた。

「気がつけばするけど、俊樹さんも一人暮らしが長いし、2人ともあまり家にいないから生活自体は何も変わらないわ」
「へえー。そんなものなんだ」

サラダバーの野菜をつまみながら、私には想像できない主婦の生活を聞く。
主婦って、もっともっと拘束されたり家事を強要されると思っていた。

「意外と普通なんだね」
ポツリと本音が出る。

「それより桜子、森先生に結婚の噂があるわよ」
持っていたフォークを止めて、紗花が私を見ている。
「うん。知ってる」
私もランチを食べながら答える。

私の「聞かないで」って気持ちを感じ取ってか、紗花もそれ以上は言わなくなった。

紗花の言う噂が、有香さんのことなのか別のお見合い話なのかはわからないけれど、明日鷹先生に結婚の噂があるのは事実。それが事実なのかは別にして、そのことは私の承知している。

「ねえ、桜子。今日俊樹さん出張でいないし、２人で飲みに行こうよ」
「別に、いいけど」
「じゃあ7時に」
「分かった」

こうして、私と紗花は久しぶりに飲みに出かけることにした。