9月。

子供達の夏休みが終わり、小児病棟も静かになった。
数日前まで、怒られながら廊下を疾走していた少年達の姿も、プレイルームで宿題に向かっていた中学生達の姿も今はない。

「桜子先生、おはようございます。なんだか急に静かになりましたね」
病棟師長が笑顔を向ける。

病棟に患者が少ないのは、基本的にうれしいこと。
それは、病気の子供がいないって事だものね。

「しばらくは、師長も部屋割りの心配がなさそうですね?」
「はい。助かります」

病院に夏休みなんて関係無いように思えるが、実はある。
小児病棟へ入院してくるのは、0歳から15歳までの子供達。
しかし、時期によって入院患者の年齢層は偏っていて、冬のインフルエンザや感冒の時期には赤ちゃんで一杯になるし、
夏休みや春休みなど長期休みの時期には検査や手術で予定入院の小中学生であふれる。