「なあ大地」
「はい」
呼ばれて振り向いた大地の首に右手を回し、グッと引き寄せる。

「や、やめろ」

抵抗する大地を無視して、左手でグリグリと頭を小突いた。

「お前、良い奴過ぎるよ。無理して悪ぶってるのがわからないとでも思うか?」
「離せ!やめろー」
暴れる大地。

それでも、首をロックしたまま頭をグリグリ。

「俺、弟いないからお前みたいな弟が欲しいよ」

「いい加減にしろっ。俺は、明日鷹さんが思うような善人じゃない。悪人なんだよ」
やっと俺の腕をふりほどいた大地が、絞り出すように言い俺を睨んだ。

「大丈夫。悪人は、自分を悪人とは言わない。お前は十分善人だよ」
「じゃあ、あなたはどうなんですか?名家に生まれて、約束された未来があるのに、何で桜子を選ぶんです?2人にとって良いことは何もないはずでしょう?」

うっ、痛いところを突いてくる。

「なあ大地。お前が言うように、確かに今は賛成されていないし、色んなしがらみの中で身動きがとれないのも事実だ。でも、近いうちにちゃんと解決するから。だから、時間をくれ」
大地に向かって、俺は頭を下げた。
「・・・」
それに対して大地は、何も言わなかった。

その後、意気投合した俺たちは朝まで飲み続けた。