「仕事は、そんなに大変なの?」
しばらく続いた沈黙の後、気になった俺は聞いてしまった。

「もちろん、汚いこともしますよ。法律に触れないことなら何でも。俺はそうやって、妹たちを守ってきたんです。気分はもう保護者ですよ」
自虐的に笑って見せる大地が、この時初めて年下に見えた。

きっと大地も苦労してきたんだなと、感じられた。
俺自身も、人とは違う環境で育ったと思っている。
代々医者の家系で、医者になるのが当たり前として育てられた。
世間から見れば、贅沢をして苦労なく育ったように思われがちだけれど、実際生てきみるとなかなかしんどい。
勉強だってできて当たり前だし、いつも大人に囲まれていて、子供らしくない子供だった。しかし、そんな環境もいつの頃からか運命として受け入れていた。
立場は違っても、大地も同じように生きてきたのかもしれない。そう思えた。
そして、この時不意にある考えが浮かんだ。