後日、俺は桜子の兄さんに呼ばれた。

彼が指定したのはホテルのラウンジ。
周りには商談中のビジネスマンやカップルが目立つ中、急患の為30分ほど約束の時間を過ぎて俺は到着した。

どこにいるんだろうとキョロキョロしていると、

「先生」
手を振って合図する男性に俺は駆け寄った。

「すみません。待ちましたか?」
「少し」
「申し訳ありません。急患が入ってしまって」
「大丈夫です。急にお呼びしたのは僕の方ですから?さあ、どうぞ」
「ありがとうございます」
席をすすめられ、カウンター席に並んで座る。

「先生、おいくつですか?」
え?
「35歳です」

ククク。
おかしそう笑われた。

「何か?」
「見えないと思いますが、僕30歳です。あなたより5つ下です」
「ええ、年下?」

考えてみれば、桜子が25だからその兄さんが俺より年下なのは当たり前なのだが、外見が・・・

「ですから、敬語はやめましょう。大地でいいです」
大地は強面の風貌からかなり年上に見える。

「分かった。じゃあ、僕も『先生』はやめてもらえる?病院の外で呼ばれるの嫌いなんだ。明日鷹でいいよ」
「わかりました。明日鷹さんで」

話してみると大地はいい奴だった。
外見でかなり損をしていると思う。