カレンダーガール

結局、2時間半遅れで検査は無事に行われた。
検査結果も予想より良好で、家族もうれしそう。
エンジニア達もペコペコと頭を下げて帰って行った。

ああ、よかった。何とか切り抜けた。
そう胸をなで下ろした時、
「桜子先生。果歩先生。ちょっと」
剛先生に呼ばれた。

時刻はすでに午後8時を過ぎ。
夜勤帯のスタッフの中を通りカンファレンス室に入る。

先ほどとは別人のような剛先生が、
「どういうこと?」
立ったままの私と果歩ちゃんを椅子に座りながら睨む。

「果歩先生。指示ミスなの?」
冷たい声。

正直、逃げ出したい。
でも、果歩ちゃんの反応は意外なものだった。

「桜子先生が、自分でするって言ったのに・・・」
わざとらしく泣き出す果歩ちゃん。
ええ?
「朝、指示したよね?」
私は小声で聞く。
「そんなこと、聞いてません」
果歩ちゃんのハッキリした声。
それ以上私は何も言えなかった。

これは確信犯。
いくら言っても、果歩ちゃんは非を認めないだろう。

「桜子先生、どういうことか説明して」
剛先生が、私を見る。

不満はある。言いたいこともたくさんある。
でも、起きてしまったことが事実だから。

「私の指示がきちんと伝わっていませんでした」
言い訳せずに頭を下げた。

「桜子先生。先輩なんだから、指示したらちゃんと出来ているか最後まで確認して。果歩先生。検査の下準備したんだから、薬や処置が足りないことに気づくくらいの配慮が欲しい。二度と同じようなことがないように、気をつけて」
それだけ言うと、最後まで不機嫌に剛先生は出て行った。