30分くらい待っただろうか、
「桜子?」
私を呼ぶ声。

「先生」

「何してるの?」
すごく驚いた顔。

「会いたくて、待っていました」
「待つって、何時になるか分からないのに。せめて電話しなさい」
あきれたように、冷たくなった私の手を取った。


その後、私たちは食事に向かった。
行き先は、母さんの営む小料理屋。
カウンターに座り、煮物や揚げ物をつまむ。

「どうした?剛に怒られた?」
「・・・はい。叉、やってしまいました」
へへへ。
と、笑顔で強がってみせる。

「大丈夫?」
心配そうな声に、
コクン。と頷いた。

明日鷹先生は私の頭に手を乗せ、
「剛は信用できる奴だよ。俺が保証する。厳しいところもあるけれど、頑張ってついて行きなさい。それでもダメだと思ったときには、俺が助けてあげるから。戻っておいで」
まるで子供にするように、頭をクシャッとなでる。

うれしいやら、恥ずかしいやら、私は耳まで真っ赤になった。

私にも分かっている。
もう逃げ道はない。
ここで踏ん張るしかないんだ。

翌日、ちょっと元気になった私は小児科医として勤務に就いた。