4月1日。
私、鈴木桜子は研修医2年目の春を小児科で迎えることとなった。

直属の上司は、桜井剛先生。35歳。
180センチの長身に、すらっと細身。
穏やかな口調と、優しい笑顔は、患者にも家族にも人気がある。

「桜子先生。午前中は病棟待機。午後からNICUに入るから」
初日の今日は、小児科病棟を見て回る。

小児科の患者は、当然小さな子供達。
そのせいか、外来も病棟もかわいらしいピンクや薄いブルーであふれている。

「桜子先生。アニメのキャラクター描ける?」
「はあ?」
意味が分からず聞き返すと、剛先生の手には、かわいい絵が描かれた医療用テープが小さくカットされたものが握られている。
「これを、スタッフが書くんだ」

へー。
こんなかわいいもの、子供達に貼ってあげれば喜びそう。

改めて見ると、剛先生の聴診器にも熊やウサギのマスコットがぶら下がっている。
やっぱり小児科医なんだ。