「啓介、一緒に病院へ行こう。ここにいたらダメだよ」
警察を呼ぼうなんて頭はこの時の私にはなかった。
まずはうちの病院に連れて行って、穏便に済ませられる方法を探そう。
今すぐには無理でも、何年かかっても、啓介が医者に戻れる方法を考えよう。
そんなことを考えていたのに・・・
突然、
「わーー」
叫び出す啓介。
ヤバイ。
目がいってる。
薬のせいで訳が分からなくなっている。
私は携帯を取り出した。
「止めろー。誰も呼ぶなー」
泣きながら叫ぶ啓介。
それでも、私は携帯を手にする。
「やめろー桜子」
叫ぶ声。
振り返ると、光るものを手にした啓介が、
えっ?
ドンッ。
啓介がぶつかる。
い、痛い。
背中に激痛。
「あー、ああーー」
錯乱する啓介。
力を振り絞って、119番へ通報した。
私は、朦朧とする意識を痛みでやっと保っている。
啓介は、部屋の隅で震えていた。
ドンドン。
ドアを開ける音。
駆け寄る人影。
「大丈夫ですか?」
「東邦大学病院へ搬送してください」
それだけ言うと私は気を失った。



