その後、俺達はファミレスに戻った。
彼女はモーニングセットを、俺はコーヒーを注文。

「先生の不機嫌の理由は、私だけですか?」

何か探るような表情に、きっと彼女は気づいているんだと確信した俺は、すべてを話すことにした。

「栗林有香は知っているよね?」
「はい。先生の幼馴染」
「そう。10年以上会っていなかった有香が、突然来たんだ。よその病院で胃がんと診断されたって」
「えっ?」
やはり、驚いてる。

「病状は?」
「進行癌。かかりつけの病院で検査と放射線治療をしているけど、オペできるかは分からない」

「だから、最近よく2人で出かけてたんですね」
納得した様子。

急に、桜子が向かいの席から俺の横に移動した。

「明日鷹先生」
「ん?」
両手を伸ばしそっと俺の頭を抱えると、自分の肩に導く。

「おいっ」
驚いている俺に、
「いいから・・・」
右手で俺の頭を抱え、左手を背中に回す。

ふっと、彼女の臭いがする。
背中に回された手が温かくて・・・不覚にも涙が溢れた。

彼女の肩に顔を埋めたまま、俺も彼女を抱きしめる。

「私、先生が大好きです」
桜子が耳元で呟いた。
「馬鹿、かわいすぎるだろ」
俺は、もう一度桜子の唇を奪った。