その時、僕と春樹の話をじっと聞いていた栞の友達が口を挟んだ。


「それが…栞、もうここには居ないんです…。」


彼女はそう言いながら申し訳なさそうにゆっくりと視線を地面に落とした。

僕はすぐに聞き返した。


『居ないって?』


僕の言葉に、彼女は躊躇っていた。

少しの空白を置いて、彼女は答えた。


「本当は口止めされてたんですけど…
栞、少し前に田舎に帰っちゃったんですよ…。」


『え?…いつ帰ってくるの?』


彼女は俯いたまま、しばらく黙っていた。


「たぶんもう…こっちには帰ってこないと思う…」


『どう…して?…で、でも学校は!?』


「栞…学校も辞めちゃったから…。
そのことはすごく悩んでましたよ…
人時さんに相談しようかな?みたいなことも言ってましたし…。」


『そんな話…聞いてないよ…。』


その瞬間、僕は栞と最後に駅の改札の前で話した日のことを思い出した。


『それって…2か月くらい前のこと!?』


「あ…はい。たぶんそれくらい前だったと思います…。」


やっぱりあの日だと僕は確信した。

あの時、栞は…本当は僕に相談したかったんだ…。

一人路上をしていた頃、いろんな話をしていた時のように…。

なのに僕は彼女にあんな酷いことを言ってしまった。