「どう…したんですか?」


僕がその詞を読んで、突然涙を流し始めたのを気遣いながら、春樹がそっと声をかけてきた。

僕は一度息を止め、涙をグッと堪えた。


『い、いや…なんでもないですよ…。』


「その詞って…」


『僕が作った最後の曲の詩なんですよ…あの子に書いて欲しいって頼んだんです…。』


「人時さんとあの子って…」


『僕の…僕の片思いだったんですよ…』


「気持ちは…伝えたんですか?」


『うううん、それは…出来なかった』


「どうして?あの子はきっと…」


『彼女は清楚でおしとやかで頭もよくて…僕なんかとはまるっきり違う。
なんか…初めてあの子を見た時から近づいたらいけないような気がして…。』


「それで?諦めてたんですか?」


『そうじゃないんだけど…
でもあの子は…僕の唄だけを聴きにここに来てて…応援してくれてたことがわかったから』


春樹は「はあ…」と一つ溜息のようなものをついた。


「人時さん?その詞…誰のために書いてるのかわかります?」