振り返ると、そこには一度どこかで見たことのあるような女の子が立っていた。


『は、はい…そうですけど。あの…確かどこかで』


「私…栞の大学の友達なんですけど」


そう言われて思い出した。

確か彼女は一度だけ、僕が一人で路上をしていた時に栞と一緒に来ていた子だった。


『あ…すいません…今、思い出しました。確か、栞ちゃんと一緒に来てくれてた…』


「はい、一度だけだったんですけど…覚えてくれてました?」


『うん、思い出した!ごめんなさい忘れちゃってて…』


「いえ!いいんです!一度だけだったし…あの、じつはこれ」


その子はカバンの中から、四つ折りになった一枚の便箋のようなもの取り出して僕に差し出してきた。


『…これは?』


「栞から頼まれて…人時さんに渡してほしいって」


僕は彼女からその便箋を受け取って広げてみた。




『…冬の月?』


一番上の行にはそう書かれていた。

それが手紙でないことは一目見てわかった。