『そう?』


「はい」


『本当に?』


「はい」


そこで彼女はいつもと変わらない優しい笑顔を見せた。

安心した僕は、言うつもりではなかった言葉を口にした。


『それでプロを目指そうと思って…』


「え!?プロですか!?」


『うん、春樹さんとだったら…なんかいけそうな気がするんだ』


「え?でも…人時さんは唄うのが好きだからって…」


『そう…なんだけど』


「だったら…」


『で、でも!!プロになって音楽を続けていけるなら…やっぱり目指したいし…』


「そう…ですか…。」


彼女が小さく言ったその言葉を最後に少しの沈黙があった。

栞は俯いて、僕の視線から顔を逸らした。


「いつからですか?」


その言葉も騒がしいこの街では聞き逃してしまうほど小さかった。


『来週の…土曜の夜から…』


それはなるべく早く活動を始めたいという春樹が決めたことだった。