口を開くと、彼は店に入ってきた時の印象とかなり違った。

どちらかというと軽いノリで、話しやすそうな雰囲気だった。


『あ、僕は人時(ひとき)って言います。よろしく…』


「すいませーん!!コーラフロートひとつ!!」


彼は大きな声で厨房の方に向かってそう注文した。

それから僕の方に視線を向けて言った。


「はい、知ってますよ。(笑)
お互い路上ではたまに会ってましたもんね。
それでギター上手い人だなあって前から思ってたんですよ!!」


彼はその第一印象と容姿、雰囲気からは想像もつかない…コーラフロートを大声で注文した。

この時すでに僕は、完全に彼のペースにはまっていた。


『ああ…そうなんですか?
あ、僕も見たことはありましたよ?
唄上手いし…いつもお客さん結構集めてますよね?』


「そんなことないですって!!
俺、ギター全然ダメですから…だから人時さんと組みたいなって思ったんです!!」


そう言って彼は満面の笑みを見せてさっと手を差し出してきた。