さっきまで少し元気が無さそうだった先生の表情が


ぱぁっと明るくなった。


「おぉ!急に優しくなったな!!じゃあ...」


そういうと立ち止まり、左手に持っていた中身の


入っていない白いカゴを渡してくれた。


「え?」


予想外だった。


てっきり、画用紙を半分に分けてその片方を


渡されるんだと思っていた。


私が呆気にとられていると、津田先生は私を見て


優しく微笑みながら言った。



「女の子にこんな重いもの、持たせられないから。」



その瞬間の先生の顔が、強く印象に残った。


再び歩き出す先生の左隣へ私は並んだ。


「最初から手伝ってくれたらツンの評価、高くしたのになぁ」


もったいない、と笑う先生。


「え!?今手伝ってるじゃんっ」


先生と2人きりになって、気まずいと感じていた私。


最初から手伝えば評価も高くなるなんて


全く考えもしなかった。


「いや、もう遅い!」


「評価、ちょっとだけでいいから高くしてよっ」


「やーだっ」


意地悪な顔で否定する先生。


(・・・小学生かよっ。)


津田先生ってこんな顔するんだな。


真剣な眼差しで教卓に立つ姿しか知らなかったから、


ちょっと意外。





午後5時35分。


職員室に着くと、持っていたカゴを津田先生に渡す。


「ツン、ありがとうな」


「評価は?」


「諦めなさい」


・・・ケチっ。


「じゃあ気をつけて帰ってな!」


「・・・はーいっ」


「さようなら」


「さよーならっ」


そう言って私と先生は職員室前で別れた。





靴を履いて外に出ると、周りは薄暗くなっていた。


11月と言うこともあり、午後5時を過ぎると


一気に日が落ちて暗くなる。


そんな中、私は1人で下校していた。