教育相談(雑談)を終え、私と津田先生は進路室を出た。


「じゃあ俺、こっち降りるから」


そういうとすぐ隣にある中央階段を指さした。


「あれ、教室には戻らないの?」


教室は私が出ていったら誰もいなくなるし、


鍵閉めしないといけないんじゃ...?


「この後すぐ職員会議が始まる。


施錠はそれが終わったらするから大丈夫だよ」


「そっか」


・・・先生とはここでお別れ、か。


自分の荷物、全部もってくればよかった。


そうすれば1階まで一緒に降りられたのに。


ちょっと残念。でも...。


一緒に降りられないなら。



「先生、職員会議頑張ってねっ」



今日一番の笑顔で。


これぐらい言わせてね、先生。


少しびっくりした表情だったけど、


それはほんの一瞬のこと。


最後には優しくて暖かい表情を浮かべていた。


「ありがとう、ツンも気をつけてな」


「うんっ」


「さようなら」


「さよーならっ」


津田先生は、進路室の隣にある階段を降りていった。





教室に戻ると、私は帰る準備をした。


時刻は午後6時。


ちょうど職員会議が始まる時間だ。


さっきの余韻が残っているのか、


まだドキドキしている。


いつもはみんなが居るから、合間にしか話せないけど、


今日は2人きりの空間でたくさん話せた。


意地悪で子供っぽい表情になる時もあるけれど、


思わず吸い込まれそうな優しい表情になる時もある。


津田先生と接していくほど、


いろんな表情を見ることが出来る。


私にとって、それが何より嬉しかった。


今まで知らなかった一面も。


先生を好きになればなるほど、もっと知りたい


と思うようになった。


コロコロと表情を変えていく津田先生。


・・・ずるい。


こんなんじゃ、もっともっと先生のこと


好きになっちゃう。



それがたとえ、叶わない相手だったとしても...。


この想いは、止まることを知らない。