──(僕に...何ができるというのだろうか。)

ルタは白を基調とし金糸で皇印が刺繍された手袋をはめる。「皇子様、お時間です。」「...そうか。」


まぶたを閉じていてもわかるほどの強く白い光を感じる。それと同時に心地よい風が肌をくすぐる。

これは夢なのだろう。

地下のひんやりとした感覚ではなく暖かく包まれるような感覚の夢を見るなんて私の想像力すごい、なんてバカな事を考える。ふんわりとしたこの感覚から抜け出したくないという本能を抑え、重いまぶたを開ける。

「…。」

もう一度、まぶたを閉じる。気のせいだ。いつもの暗い地下ではなく明るい外、だなんて。

「なんで…。」

受け入れがたい出来事は続くという方程式でもあるのだろうか?だって、私の目の前には、炭酸が抜けたソーダ色の空、濃くそして淡い緑色をまとう草木が。今まで自然とは無縁の私だったが、その自然のど真ん中で息をしている。

 いつもなら周りを取り巻く雑踏がなく、代わりにあるのは初めて目にする「鮮やかな緑」。たったこれだけの変化だが、私の冒険欲を掻き立て、未だ脳に渦巻いていた眠気を吹き飛ばすには十分すぎるほどだった。


とりあえず歩き始めてみる。目覚めたときの場所を覚えておこうと思ったが、目覚めたところは見渡す限り一面草花で特徴がなく、全く覚えられそうになかったため、とりあえず突き進むことにした。

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