─ザザッ…ツー……シス……起…、自………ルド…生成………。─


「おい!泥棒だー!捕まえろ!」

「ハッ、できるならやってみろよーだ!」

悔しがる店主の顔を横目に路地の裏へと滑り込む。

(いつまでこんな風に過ごしてなきゃいけないんだろーな...)

路地裏というせいもあり、辺りは先ほどより暗くなっていた。

「流石に巻けたかな...パンの一つくらい良いって言ってくれれば優しいのにね。」

小さい頃に拾って大事にしてきたぬいぐるみに話しかける。

そうして盗んできた固いパンを食べ、下水道に潜って寝る。
ただ、それだけの毎日だった。

─────昨日までは。

管理が行き届いていないスラムの下水道は暗く、臭く。誰もくるような場所ではない。
どれだけ貧しくても住んでいるのはカシスくらいだった。

カシスが目を閉じてうとうとしているとコツ、コツという音が聞こえ奥から何か青白い光がこちらに向かって進んでくるのがわかった。

(まずい、警官に見つかったか。)

護身用にと拾った古びたナイフを片手に水道ポンプの影へと隠れる。

コツ、コツ、コツ

音が大きくなるにつれてカシスの鼓動も大きくなっていった。

コツ、コツ

ふと水道管の前で足音が止まる。

(気づかれた...)

全身の力がサッと抜けると同時に、カシスはナイフを握り直した。

しかし光はそこから動かなかった。......長い間静寂が続き、聞こえるのは下水の流れる音だけ。

(どうして動かない?)

カシスは不思議に思い水道管の影から頭を出す。

すると────青白い光と目が合った。

「男の子...?」

思わず声に出したひょうきんな声に頷くかのように少年が放つ光は強くなった。

カシスはあまりの眩しさに目を瞑る。その瞬間、暗転した視界に飲み込まれる。まるで睡魔が纏わりついているかのような、ふわっと軽くなる感覚に身を任せ、カシスは意識を手放した。


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作者の藍来(あいな)と申します。
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