横浜山手の宝石魔術師



「冬真さん、以前私に素直に行動した方が良いって言ってくれましたよね?

私はまだこの洋館で皆さんと一緒に過ごしたいんです。

だから、突き放さないで下さい」


その朱音の言葉とは裏腹に、気弱な雰囲気などみじんも無い。

突き放すなと言いながら、朱音から冬真の手をしっかりと握っているようにすら思えるほど強い意志。

冬真は、何故さっきあのような事を言ってしまったのか自分でもわからないが、朱音の芯の強さを垣間見た気がして不思議と安心していた。

冬真は少しして笑みを浮かべる。


「朱音さんが変な人に騙されるのではと心配だったのですが、その様子だと大丈夫そうですね。

えぇそうです、朱音さんはもっと自分を大切にすべきです。

とりあえず、お守りはしっかり持つこと、遅い時間に帰るときは気をつけること、知らない人にはついていかない、良いですね?」


「はい・・・・・・」


冬真は子供に言い聞かせるように指を一つずつ増やしながら笑顔で念押しする。

さっきのおかしな言葉は単に自分へのお説教の延長で話したことだとわかり、朱音は叱られた生徒のようにしゅんとしながら答えた。


その日の夕方、キッチンに入った冬真はアレクがドライフルーツがふんだんに入ったパウンドケーキと朱音の好きな紅茶を用意しているのを見て笑う。


「落ち込んでいる朱音さんにですか?アレクは随分と朱音さんに甘くなりましたね」


アレクは準備していた手を止めてすぐ近くに来た主人に顔を上げれば、冬真は笑っているようでその取り巻く雰囲気が変わっている。


「構いませんよ、今はね」


そう言うと、ミネラルウォーターのペットボトルを一本冷蔵庫から取ってキッチンを出て行き、アレクはその背中を無言で見ていた。