横浜山手の宝石魔術師


真後ろの壁には曼荼羅のような大きなタペストリー、目の前の女はウェーブがかかった茶色い髪が肩上くらいでハイネックの服に大きな紫色の石のついたネックレス、両腕に沢山の石のついたブレスレットをつけ、頬にはそばかす、人の良さそうな笑みを浮かべていた。


「どうぞ」


突っ立っていた朱音に女は笑みを浮かべて目の前の席を勧め、朱音は慌ててその椅子に座る。


「私は少々霊感が強くて、学生さんの恋のサポートになればと私の力を込めた特別なインカローズのブレスレットをお渡ししているんです。

思ったより力を使って疲れてしまうので、数も作れないし時々しか出来ないので学生さん達にはお待たせして申し訳ないのですが」


困ったように笑うその女を見て、朱音は何も悪い印象を抱かなかった。


「それが段々人気が出てきて、大人にも売って欲しいという話しが出まして。

元々は学生さん達の為でしたし、なら今回お試しでとこんなことをやってみたんです。

朱音さんはインカローズのブレスレットをお求めと言うことで良いんですよね?」


「あ、はい」


ごく自然に名前を呼ばれて朱音は不思議に思ったが、絵里達が先に話したのだろうとそこまで気にならなかった。


「では、両手の手のひらを上にして机において下さい」


朱音がそっと手を机に置けば、その上に重ねるように女が両手を置いて目を瞑った。

ジャラっと両手のブレスレットの石がぶつかる音がする。


「好きな人は・・・・・・外国のモデルでしょうか。

品もあって背も高い、なんとも美しい男性ですね」


朱音は思わずびくっと身体が揺れる。


「随分と難しい相手を好きになってしまったんですね、でも大丈夫。

朱音さんの恋が叶うようインカローズを調整しましょう」


ゆっくりとひんやりした手が離され、朱音は机に手をのせたままどくどくと心臓が音を立てている。

もしかしてこのインカローズのブレスレットをつければ、あの冬真も自分を子供のように扱わず、少しは違うように見てくれるのだろうか。

ずっと世話になりっぱなしで、ずっと子供のように守られて。

私なんかが冬真さんには似合わない、なんて思っているくせに、少しくらい女性と思って欲しい、あの美しいラブラドライトのような瞳に自分だけを映してもらう瞬間が欲しいと心の隅でずっと思っていたことを見破られた、そして自覚してしまった事に朱音はどうしていいのかわからなくなりそうだった。