横浜山手の宝石魔術師




二階の薄暗いフロアにはドアが二つだけ。

細長い廊下の突き当たりのドアが開いて、絵里が朱音に向かって手招きした。

中は土足で入られるようカーペットが敷いてあり、入った途端何かお香のようなものが部屋に充満していて、その部屋はすぐ入った場所にパイプ椅子が数個壁に沿って配置され、そしてその部屋の奥にまたドアがあった。

置物も何も無く、窓には外の光が入らないようにか板で目張りした上に紺色のカーテンで隠され、ろうそく台のようなランプがいくつかあるものの部屋の中は思ったより暗い。

絵里と真央の横に笑顔の女性が一人いて、絵里は困惑したような顔をして朱音を見た。


「お姉さんが先なんですって」


「えっ?」


「はい。まずは確認を兼ねてご紹介の方を先に先生に視て頂いています」


真っ白な顔に真っ赤な口紅をしている黒髪ショートヘアの若い女が朱音に笑みを浮かべながら説明した。

朱音は最初購入しないつもりだったが、考えてみれば持ち帰った方が冬真に一番良いはずだ。

なんとなく、よく頑張りました、と冬真が褒めてくれそうで朱音は何としてでも手に入れて持ち帰ろうと決めた。


「私が買った後に、この学生さん達は確実に買えるんですよね?それも半額で」


朱音が奥の部屋に案内しようとした女にそう確認すると、もちろんです、と笑みを返してきた。

振り返ると、二人が入り口近くのパイプ椅子に座らず立ったまま不安そうに朱音を見ている。


「ちょっと待っててね」


朱音の言葉に二人はホッとしたような顔をして朱音は笑顔を浮かべると、女がドアを開け、その中に朱音は足を踏み入れた。


何重にも天井から透明なシフォン生地のようなものがかけられ、それを手で横に寄せながら奥に進めば、いかにも占いである小さなテーブルとその奥に女が一人座っていた。