横浜山手の宝石魔術師



「だから一緒にインカローズのブレスレット、買いに行きましょう!」


もうその場に倒れようかな、と思っていた朱音は、その絵里の言葉で我に返った。


「この周辺の女子達に特別なインカローズのブレスレットが流行ってて、それが滅多に買えないんですけど、今連絡が来たんです。

20歳から25歳までの彼氏のいない女性を連れてきたら、インカローズのブレスレットを確実に売ってくれてその上半額にするって!

もちろんお姉さんも半額になるみたいだし、こんなの初めてだから絶対行った方が良いですよ!

場所も中華街に近いみたいで、受付まで45分くらいしか無いから私達を助けると思って付き合って下さい!」


絵里は興奮した顔と声で朱音に詰め寄ったと思ったら、少し後ろでぽかんとしていた真央に、ほら、真央もお願いしなよ!と絵里にせっつかれ、二人で同時に朱音に頭を下げた。

朱音は唐突な流れに面食らい、戸惑ったように必死な顔の女子高生達を見ていた。


「お姉さん!買わなくても良いの!

連れてくるだけでも良いって書いてるからお願いです、助けると思って一緒に来て!」


絵里は必死だった。

これはきっと運命だ。

私が頑張ってこの人を連れて行けばずっと真央の欲しがっていたインカローズのブレスレットを確実に売ってくれる、それも半額で。

なんとしてでも連れて行かなければと義務感に駆られていた。

朱音はそんな絵里達を前に、もしかしたら冬真の言っていた例のインカローズのブレスレットの可能性があると思えた。

こんなチャンスを逃すわけには行かない。

時計を見ればまだセミナーが終わるまで10分ほどある。

朱音はきゅっと右手を握り、必死の顔で自分を見つめる女子高生二人を見た。


「わかりました。コートと鞄を取ってくるからここで待ってて下さい」


その返事に、絵里と真央は一気に嬉しそうな顔をした。


「すぐ戻ってきて下さいね!」


絵里に急かされ、朱音は急いで洋館に入り二階に上がれば冬真の話す声がレクチャールームのドア越しに聞こえる。

荷物を置いている会議室に行けば、アレクはいない。

ランチの荷物を一旦持ち帰ったのだろうと思い、朱音はスマートフォンを取り出し冬真に簡単に事情を打ってLINEを送り、鞄とコートを取って急いで部屋を後にした。