横浜山手の宝石魔術師


「では今日の確認を」


二階にある小さな会議室では、長机の一つは冬真の占い場所としてセッティングしてあるが、端に置いた机にアレクがお昼用に持ってきた手作りサンドイッチと紅茶を用意し始め、朱音は冬真の言葉を待っていた。


「朱音さんにはまずは出席者の確認後、席は入ってきた人から順に前に座らせて下さい。

僕はレクチャールームにセミナーの始まる少し前に入ります。

セミナーが始まったら、外を、特に洋館前の歩道を覗いてきて下さい」


てっきり後ろで学生達の様子をうかがうのかと思っていた朱音は不思議そうにする。


「おそらく今日参加できなかった学生達がいる可能性があります。

状況によって、占いだけ受けられると誘ってみて下さい。

10名くらいなら大丈夫です。

元々かなり簡易な占いしかしませんし、彼女たちのしているインカローズをより側で確認するのが目的ですから」


「インカローズをしている女子生徒をより沢山冬真さんが見られるようにすれば良いんですね。

そして情報収集。了解です」


朱音はサンドイッチを急ぎながら頬張って、確認しながら頷いた。

そんな朱音を見てクスッと冬真が笑ったので、自分がはしたなく食べていることを笑われたのかと思い、朱音は思ったより自分が最初の頃より冬真の前で気にせず食べて気を抜いていることに凹む。


「あぁ、すみません、朱音さんがあまりに力が入っている姿を見て何故か笑ってしまいました。

こんなにこの仕事を楽しく感じることはあまり無いので」


優しく微笑みかけられて朱音は一瞬息が止まった。

目の前で微笑みながら背後に薔薇の花びらをまき散らしている美しい人がいるので仕方が無い。

だが、すぐ冬真の言葉を思い出し異世界に飛ばされかけていた気持ちが引き戻る。


「あの、冬真さんはその、本業って楽しくないんですか?」


魔術師という仕事を冬真は自分で選んだと以前話していたのを聞いて、冬真にとってこの仕事は楽しいのかと単純に朱音は思っていた。