横浜山手の宝石魔術師



「ありがとうございます」


にこりと笑みを浮かべそう言った冬真に、朱音は嬉しそうな表情を浮かべる。


「先ほどお話しした学校から、夏休みに体調を崩し入院した生徒が数名、問題行動を起こし警察から連絡のあった生徒が数名出ました。

夏休みは開放的になりがちですし、大人数の学校なら羽目を外すような事が少しくらい起きてもおかしくはないかもしれません。

でも生徒達は皆、品行方正で今まで何の問題も無い生徒ばかりで、段々学校側も違和感を感じていたようです。

そして行方不明の生徒がどちらの学園でも出てしまい、なかなか警察では取り合ってくれないと私達の団体に相談が来たのです。

そして調べていて一つ共通点がありそうだとわかりました」


朱音は思ったより深刻な話しに、表情を引き締める。


「女子学生が皆、パワーストーンのブレスレットを購入しているのです」


思わず朱音は首をかしげた。

てっきり恐ろしい魔術で人が消えている、くらいを思っていたので肩透かしにあった気分だ。

だいたい大人だって好きなパワーストーンを、年頃の女の子ならそれなりに持っていて不思議は無い。

そんな朱音の疑問を冬真はわかっていた。


「確かに日本でパワーストーンというのは老若男女関係なく普通に浸透しています。

ですが今回の共通点はとあるインカローズのブレスレットで、恋が叶うという評判の元、学生達だけの情報網で購入したものなんです。

どうやら登録している学生にだけ不定期に情報を流してそのブレスレットを限定で売るらしく、それもその場に行かないと購入できないそうなのですが、買った学生達の多くが片思いが叶った、という噂が瞬く間に広がってかなりの生徒が購入しているようです。

中にはそれに便乗してまがい物を売っていたり、そこで買えなくても身につけたいとインカローズのブレスレット自体が学生達で流行ってしまい、どれがその問題のものか判別しにくい状態になっています」


目の前のローテーブルに置かれた白磁に小花柄のティーカップを持つと、口に運べば水分で冬真の唇が濡れ不思議な妖艶さを醸し出している。

今ここで話しているのは宝石を一般人に売る冬真では無く、魔術師としての冬真だと言うことを感じさせた。