横浜山手の宝石魔術師



「健人さんも冬真さんに出会って救われたんですね」


「・・・・・・お前はあいつと会って救われたのか?」


健人の話を聞いて感動していた朱音が言った言葉に、健人は真面目な顔でそう聞いてきたことが朱音としては驚いてしまった。

もしかして冬真には自分の感謝が伝わっていないのだろうかと。


「もちろんです!

もしかして冬真さんが気にしてたりするんですか?」


心配になってそう聞くと、健人は黙ってしまった。


「あいつの本業は知ってるよな?」


「はい」


「あの連中は腹の探り合いが日常で、本音を話すなんてもってのほか。

あの冬真だって例外じゃ無い。むしろあいつはあの連中そのもの、だ」


真面目な顔でそんなことを言われ、朱音は困惑したように健人を見る。


「あいつが俺や朱音を同じ家に住まわせるのは、わかりやすい人間だからだ。

腹の探り合いをしなくていい、それはあいつの世界の住人ではありえない。

だが俺たちは違う。

あいつの本業を踏まえた上であいつを見なきゃ行けない、そのままで受け止めるのはリスクがある、特に女は、な」


健人の最後に言われた言葉で何を言いたいのか朱音はわかった気がした。


「私は別に・・・・・・」


「無理すんな、あれで好きになるなって方が無理だ」


「もし、そうだとしても叶うわけでも無いですし」


「叶う叶わないで人を好きになるわけじゃ無い。

人を好きになればそう簡単に止められるものじゃ無いだろ」


弱気に答える朱音に、健人はきっぱりと答える。

健人から冬真を好きなのかを問われた訳で、朱音はあまりそのことを考えたくは無かった。

感謝しているし、優しい人で、知識の豊富さなど心から尊敬している。

だが冬真が自分に向けるものはおそらく以前冬真自身が言ったように、保護者みたいなもの、というのを朱音自身も理解していた。

優しく、心配されながら守られている、それしか冬真からは感じない。

好きな気持ちが無いわけじゃない。

だが不毛な相手を思ってしまったのはロンドンで出会ったあの王子様以来で、朱音からすれば冬真との距離感を間違えてしまえば、この洋館から出て行かなければならなくなる、それだけは嫌だ、という気持ちの方が大きい。

本来出会うことの無かった冬真達と出会ったこの奇跡の時間を大切に思うのならば、今の淡い気持ちはあの王子様に抱いたものと同じで今後も変わらず冬真達と過ごせると朱音は思っている。