横浜山手の宝石魔術師



「しばらく冬真のアパートメントの一室に転がり込んでいたわけだが、そこで冬真が講演用のパンフレットを作ってるのを見て、これがまた味気なかったんだよ。

思わずイラストくらい入れたらどうだって言ったら、もう誰かに頼む時間が無いっていうんで色鉛筆買ってきてくれって頼んだんだ、少し描くくらいならできるかなって思ってさ。

でも買ってきたのがただの色鉛筆じゃなくて高級な水彩用色鉛筆で、もったいないから水彩画に仕上げたんだ。

それを冬真が絶賛してくれて」


「じゃぁKEITOさんの作品第一号は」


朱音がドキドキしながら聞けば、健人が笑う。


「そのパンフレットが好評だったらしく、冬真はわざわざKENTOが描いたって言ったのに、どうもどっかで聞き間違いが広がったらしく、俺は気が付けばKEITOになっていた」


「ええっ?!」


てっきり自分の名前をベースに健人の意思で名前をそうしたのかと思ったら、まさかの展開にファンとして朱音は驚くとともに、こんな特別な話を聞けて、ミーハーな気分が盛り上がりそうなのを必死に押さえる。


「冬真に、この絵は素晴らしい、もったいない才能だと言われて俺も何だか良い気分になって。

で、日本に戻ってからもやりとりはしてたんだが、冬真が日本の洋館を譲り受けて住むけど部屋が空いてるから一室貸そうかって誘われて、二つ返事で転がり込んだよ。

その頃には絵の仕事も入るようになっていたけれど、あの家に住むようになってからの方がイラストレーターとして人気が出たって感じだな。

アレクがいるから描くことに集中できるし、何より冬真と出会ったのがでかかった」


途中、頼んだ食事を持ってきたさっきの店員は話しを遮らないよう静かにテーブルに置いて出て行って、健人も特に気にすること無く朱音に話していた。