横浜山手の宝石魔術師



「朱音はソフトドリンクだよな?

肉、野菜、揚げ物、何がいい?」


「全くわからないので健人さんのおすすめで」


メニューを見てみるが、今日の渾身のサラダAとか、俺の肉(松竹梅)などと書かれていて意味が朱音にはわからず健人に任せることにした。


「俺のおすすめだと肉ばかりになるぞ?」


「サラダは食べたいです」


笑って健人が言えば、朱音は真顔で主張した。

ドアが開いてさっきの店員がおしぼりと水の入ったコップをテーブルに置く。


「君、橘の彼女?」


「へ」


店員の唐突な質問に、朱音は間の抜けた声を思わず出してしまう。


「違う違う、俺が住んでいるとこに新しく入った子なんだ。

ちょっかいだすなよ、冬真が本気で殺しにかかってくるからな」


「あの美形の彼女なの?!」


心底驚いてまじまじと店員から見られ、居心地が悪い。

どう考えても、あの美形にこんな女が?!っていうのが痛いほど伝わるし、朱音自身もそう思って何故か凹む。


「お前、そのリアクションまずいだろ」


健人の注意に、店員は慌てる。


「いや、そういう意味じゃ無くて、あの美形、女に興味があったんだなって」


「あぁそっちね」


二人してうなずき合っているのを見て、朱音は冬真が女装していた時を思い出し、大抵の女性じゃ美人とか綺麗だなんて思わなそうだという点で同感できる。


「冬真はあくまで朱音の大家。

俺が朱音にセクハラばかりするって毎度注意を受けてるよ、小舅みたく」


「なるほどねー」


置いてけぼり状態の朱音に気が付いた店員が笑う。


「橘とは水泳選手時代からの付き合いなんだ」


「水泳選手?」


「とりあえず注文取ってくれよ、腹減った」


朱音が不思議そうに尋ねると健人が耐えかねたように言い、店員は笑って注文を取って出て行った。