「お前って実はイタリア人とのハーフなんじゃねーの?

よくそんな歯の浮くような台詞と態度を平気で出来るよな」


面倒そうに言った健人に、


「僕は別にイギリス紳士ぶる気も、日本男児ぶる気もありません。

純粋にそう思ったから口にしただけです」


「日本の男はなぁ、そういう風には言わないんだよ!」


「健人、それはいけません。

女性は存在だけで素晴らしいんです、素直に褒めるべきです」


真顔で言った冬真に、健人が目を見開いた後、こういう奴がいるから嫌なんだよ・・・・・・と呟いてビールを煽った。


そんなやりとりを見て、朱音はくすりと笑う。

こんな風に言い合っていても二人は仲が良い。

冬真も健人もここでは素をさらけ出していて、そんな中に自分がいられることが朱音は嬉しい。


「アレク、プレゼントありがとう。

最後のケーキまでどれも素敵で美味しかった。

出来れば全部写真に撮って友達に自慢したかったよ」


朱音からわざとなのか少し離れて座っているアレクに言えば、アレクはやはり目を大きくさせた後、ふい、と顔を背け、当然のことをしたまでです、と言って紅茶を飲んでいる。

最初出会ったときはアレクに酷く嫌われていると凹んでいた朱音だが、無愛想に見えるだけで、残業して疲れ切っているときは甘い物を持ってきてくれたり、夜眠れなくてリビングに居たら既に零時を回っているのにハーブティーを持ってきてくれたりと、とても優しい。

もしかしたらこの洋館の一員になったからアレクもそう対応するのかもしれないが、こうやって気にしてもらえて優しさをもらえる、朱音にとってはこの上ない幸せだった。


「こんな素敵な誕生日は生まれて初めてです。

本当にありがとうございました」


朱音が心からの言葉を言って頭を下げると、よくわからない言い合いをしていた健人と冬真が顔を見合わせる。


「そんなに喜んでもらえるとは。

来年も楽しい誕生日にしましょうね。

あ、彼氏がいたら別の日にでも」


「今回はお前の誕生日を知ったのが直前で焦って用意したからな。

来年何か希望があるなら早めに言ってくれ。

それと、彼氏よりこっちを優先しろ、こっちを」


「和食もイタリアンでも大抵のものは対応可能です」


冬真と健人と最後はアレクまでもそんなことを言って、朱音は胸が一杯になる。

三人に出会いこんなにも良くしてもらって、なんだか罰が当たりそうだ。


「こんなにしてもらって、私、三人に何も素敵な物を返せる自信がありません・・・・・・」


料理は一応出来るがアレクに比べればお話にならないし、お金も無いので豪華な物も買えなければ、手先が器用というわけでも無いので手作りを渡せる自信なんて無い。

朱音は自分が出来ることがあまりにも無いことに、どうすべきか悩み始めた。