横浜山手の宝石魔術師



「では簡単な理科のお話しは置いておいて、その『ピジョン・ブラッド』は色もさることながら、モゴックでしか産出されず非常に希少性が高いこともあって高額なのです。

『ピジョン・ブラッド』の定義づけに、大粒であることとしているところもありますが、余計に希少性が高まるだけなので産地と色でそう名付けているところが実際は多いですね」


「で、この朱音にやったルビーは?」


テーブルに肘をつけながら、どうでもいいから結論だけ言えという目で健人が聞くと、冬真がやれやれと答える。


「モゴック産です」


「ようは『ピジョン・ブラッド』なんだな?」


健人の問いに、冬真は笑みを浮かべた。


「うへぇ、朱音、とんでもなく高額だぞそれ。

どっかで値段聞いてこい」


「えええ!」


健人がうんざりした顔で朱音に言うと、朱音は箱を持ったまま冬真を見てうろたえた声を出した。


「冬真さん!」


「返品不可です」


冬真は笑顔で慌てふためく朱音を見る。


「だってよ、もらっとけもらっとけ。

嫌になったら売れば良いんだよ、んなもん」


「何故そう売ろうとさせるんですか、自分のはオークションに出すなとか言ってる癖に」


「俺のは朱音のために作った一点物だからなぁ」


「僕もただのジュエリーとしてではなく、朱音さんを思って・・・・・・作りましたよ?」


「お前、笑顔で言ってるけどその間こえぇぞ?」


「失礼ですね。

単にルビーは元々お守りになるってだけですよ」


「違うよな?ぜってー違う意味で言ったよな?!」


朱音は目の前のやりとりを見てさすがに吹き出した。

本当に仲が良い、それだけが伝わってくる。そして自分への優しさも。


「冬真さん、ありがとうございます。大切にします」


「仕舞い込まないでつけて下さいね?」


「高額な物を身につけるのは怖いですし、こういう素敵なものが似合うようになったらつけたいと思います」


「それは違います。

宝石はあくまでつける本人を飾る物。

それをつけてより自分を華やかに、そして素敵に見せれば良いだけのこと。

宝石が似合うまで、なんて言っていたら、何歳になってもつけられません。

大丈夫、朱音さんはそのルビーに負けないほど可愛いですから」


ウィンクしてそんなことを言われ、朱音の顔がルビーに負けないほど一瞬で赤くなる。

むしろこんな綺麗なイケメンに可愛いなんて言われウィンクまでされて、平然と出来る女性なんているのだろうか、いやいるまい。