「あ、あの」
「はい」
「私、あんな素敵で広い部屋に住めて幸せですし、美味しいご飯が食べられるのは凄く嬉しいですし、心配して迎えに来てくれるのは、そのありがたいことだとわかってます」
「気にしなくて良いんです、全て僕の我が侭ですから」
「そんなことないです!
だから、迎えに来てもらうのは申し訳ない気持ちが大きいので凄く遅い時間にはタクシーで帰ること、あと、えっと、帰る時間は出来るだけ連絡します。
急な残業で連絡遅れたりすることもありますけど、出来るだけ」
「嫌な気分になったでしょう?無理しなくて良いんですよ?」
「確約は、自信が無いんですが、心配かけないようにはしたいので・・・・・・」
そう言ってやっと顔を上げると冬真の目をしっかりと見る。
「それでも、良いでしょうか」
最初は怒って、不満で一杯だったはずなのに、ずっと優しく自分を守ってきてくれた人に自分はなんて事を言ってしまったのか、今の朱音の心は不安で一杯になっている。
冬真は、不安そうな顔をしている朱音を落ち着かせるようにふっと優しい笑みを浮かべ、
「わかりました。朱音さんがそう言うのでしたらそうしましょう。
タクシーが来ないときもありますし、そういう時は遠慮せずに連絡を下さい。
運動がてら迎えに行きますから」
そう言うと、朱音はそれを聞いて緊張していた糸が切れるようにぐったりとして息を吐いた。
「大丈夫ですか?」
「はい、私、ご迷惑をかけて」
ぐー、と思い切りおなかの鳴る音が静かなリビングに響き渡る。
飲み会ではほとんど食べることも無くウーロン茶だけ飲んでいてお腹がいっぱいだと思っていたが、気が抜けたせいか突然空腹感が襲ってきた。
朱音の顔がみるみる赤くなり、冬真はそんな朱音を見てくすっと笑う。
「口を開けて」
朱音がわからず口を開けた途端放り込まれた何かを思わず咀嚼すれば、チョコレートの甘い味が口に広がりとてもほっとする。
「何かアレクに軽食を用意してもらいましょう。
僕も小腹が空いてしまって」
くすくすと笑うチョコレートを放り込んだ張本人が優しく言うと、朱音は恥ずかしさと怒りたい気分が混ざったような複雑そうな表情をした。
「そうそう、7月2日の夜は空いてますか?」
「え?あ、はい」
朱音が部屋に戻るためにリビングを出ようとしたとき冬真が声をかけ、朱音は不思議そうに振り返り返事をした。
「その日、朱音さんの誕生日でしょう?
考えてみればウェルカムパーティーもしていませんでしたし、健人も参加するのでここでみんなで夕食にしませんか?
もちろんケーキも用意しますよ」
「良いんですか?!」
「彼氏とご一緒じゃ無ければ是非僕たちと」
「いないって知ってて言うの、酷いです」
「もし当日までに出来た場合はこちらをキャンセルして構いませんからね」
「しませんっ!っていうかありえないです!」
むっとしたように言っているが朱音は嬉しそうで、部屋に戻ります!と言ってリビングを出て行った。



