横浜山手の宝石魔術師


逆に冬真はそんな朱音を見てため息をつく。

冬真という素敵な男性は、自分が思うより不器用な人なのかもしれない。

元々ここに戻りたかった、そしてまた今ここにいて、これからもいて良いと冬真が言ってるなら素直になっても良いだろうか。

朱音は自分から一歩踏み出す。


「・・・・・・本当に戻ってきても良いですか?」


「もちろんです」


「すぐ追い出されたりしませんか?」


そう尋ねた朱音に冬真はすぐに返事を返せなかった。


「次はこんな勝手なことさせねぇよ」


突然ドアが開き、健人がそう言いながら部屋に入ってくると仁王立ちして腕を組んだ。

冬真はずっとドア越しに健人が聞き耳を立てているのは気が付いていたが、まさか入ってくるとは思わず健人を見れば心底呆れたような視線を健人は送る。


「さっきから同じ事を二人してぐるぐる回ってていい加減面倒になった。

朱音、お前はここに戻ってきたいか?」


健人が冬真の近くに来て朱音に問いかける。


「もしもご迷惑じゃなければ」


「迷惑とかそういうのは抜きだ。

単にお前の素直な気持ちを聞いているだけなんだよ。だから正直に言え」


冬真はただ朱音の表情を見ていた。

あれだけ恐ろしいことや自分の身勝手を思えば出て行きたいというのは当然なのだろう。冬真はそれを受け入れるべきだと思うのに、何かわからない自分の感情に見て見ぬ振りをする。


「居たいです、ここに。健人さんと、アレクと」


朱音はそこで区切って冬真の方に顔を向ける。


「そして冬真さんと」


すぐ照れて下を向いた朱音も、座っている冬真を少し後ろから見下ろしていた健人もその時の冬真の表情は誰もわからない。


「なら決まりだな」


勢いよく冬真の背中を叩けば冬真は前のめりになって少し咳き込んだ後笑う健人を見上げ、そして少し困ったように冬真も笑う。

そして朱音に顔を向けると優しげに笑みを浮かべて、朱音は照れくさそうにした。