横浜山手の宝石魔術師


自分は彼女をどうしたいのだろうか。

冬真の美しいグレーの瞳が自分を見続けていて、朱音は恥ずかしくて逃げたくなる。

あの夜、青かったあの瞳は見間違いでは無い、そう思うけれどとてもここではその理由を聞けない。

朱音は冬真の行動と発言の真意が理解できないのがもどかしかった。


「僕は朱音さんが幸せに過ごしてくれることを望んでいます」


ふと口に出した言葉に偽りは無い。

だから、と続けようとして冬真はまた口をつぐむ。

朱音はその言葉がどこまで本当かわからないと思うのに、やっぱり自分が思っていたことに間違いは無かったと思えてしまう。


「やっぱり冬真さんは優しい人ですね」


そんな無邪気な朱音の言葉は、まだ自分を正しく見ていない事を冬真に確信させた。

あんなに恐ろしいことに巻き込まれ、まだこの子はこんなことを言うのかと。なのに、どうして自分の何かが揺さぶられるのだろう。


「戻ってきて良いというのは本当なんですか?また責任を感じたからじゃ」


黙っている冬真に、朱音はどう返すべきか悩んでいた。

ここに戻りたいというのはずっと願っていたこと。でもそれで冬真は苦しまないだろうか。

朱音は人に迷惑をかけることに臆病になっていて、なかなか素直に受け取れない。

出て行けと言われたのが今度は戻ってこいと言われる彼の真意は何なのだろうか。


「・・・・・・多分、僕は自分の知らないところで朱音さんが危険にさらされるのが嫌なんでしょうね」


困ったように冬真が笑って朱音は戸惑いながら冬真を見る。


「僕はとても身勝手な人間です。朱音さんが思うような優しい人間では無いですが、ここには健人もアレクもいます。

住んでからは僕では無く健人の言うことを信じていれば大丈夫ですから戻ってきませんか?」


自分の感覚も常識も基本魔術師としてのもので、おそらく一般人とは乖離している。

あの人の言うように、人として何か欠けていることも自覚している。

だから自分では無く、大好きなKEITOであり慕っている健人の名前を出せば戻ってくるだろうと冬真は考えたが、朱音は悲しそうな顔をした。


「私は冬真さんのことも信じています。

だってラブラドライトのネックレスを持っているように言ってくれて、ラピスラズリのブローチもきっとジェムだったんですよね?

知らない人についていかないように注意してくれたのについていったのは私です、私が悪いんです」


「ですから朱音さんは何も悪くないと」


「いえ私のせいです」


「朱音さんは人が良すぎます、僕に問題が」


「冬真さんの言いつけを守らなかった私が悪いんです」


「違います、それは」


ムキになっている朱音を落ち着かせるため最初冬真はゆっくりと答えていたはずが段々早口になってしまい、朱音は急に吹き出した。