横浜山手の宝石魔術師


何か言いたげな朱音に気が付きながら、


「オーナーから、当分朱音さんの部屋が使用できないと連絡がありました。

すぐに他の手配は厳しいですし、どうでしょう、ここに戻ってきては」


にこりと冬真が言えば、朱音は目を見開き時が止まったようになっている。

だがハッとしたような顔をして朱音は顔を俯かせ首を横に振ってから再度顔を上げた。


「ありがとうございます。どこかすぐ家を探します。それまでは安く過ごせる場所に適当にいるので」


「もしカプセルホテルとかを考えているのならやめておいた方がいい」


いえ、そんな立派なとこじゃ無くと言い返そうとしたが冬真の表情を見てそれを飲み込むと、


「色々とご心配おかけしてすみません。ここでまた目を覚ませるとは思いませんでした。

明日には出て行きます。とりあえず一旦戻って必要な物も取ってきたいので」


朱音が笑みを浮かべて言ったのを見て、冬真の取り巻く空気が変わる。


「それは許しません」


平坦な声。

なのに怒りを含んでいるかのようで朱音は思わず身体を強ばらせ、冬真はそれに気が付き自分に驚いていた。


「・・・・・・冬真さん、すみません」


笑みを浮かべていた朱音がその表情を消し謝った。


「私、何度もご迷惑をかけて」


「違うんです、謝るのは僕の方です」


朱音が再度謝罪をしようとしたら、冬真が止める。


「僕は自分に怒っていたようなんですがそれも気が付かず朱音さんを怖がらせてしまいました。

朱音さんが謝ることは何もありません」


以前似たようなやりとりをリビングでしたことを朱音は思い出し、また何か冬真が苦しんでいるのではと心配になる。


「僕は・・・・・・」


そういうと冬真は黙ってしまい、朱音は不安げに視線を少しだけ冬真にちらりと向けると、冬真は朱音を見ていた。


「せっかく逃そうとしているのに」


その呟きは無意識だった。だからこそその無意識に冬真は困惑する。

感覚というものは魔術師にとってとても大切だが、ロンドンで出会った朱音にラブラドライトのネックレスを贈ったのはただの子供への気まぐれ、朱音をこの洋館に住まわせたのは利用できると思ったからだ。

彼女に信頼してもらえるように優しく接し、子供に思える行動をフォローするため保護者代わりとして対応もした。

だから利用した詫びとして、出来るだけ不自由しない新しい住居も用意したはずが、結局彼女はここにいて、今度は戻ってこいなどと言っている。