横浜山手の宝石魔術師



「しゃべらないで下さい。

まずは身体を温めるのが先です。明日は病院に連れて行きます」


冬真は救急隊員に連絡先などを伝えると、毛布を被ったまま座り込んでいる朱音の側に行き高い背を少し曲げ手を差し出す。

濡れている冬真の髪がサイレンの光を浴びて金髪のように光り、朱音にはロンドンで出会った王子様の姿と冬真が重なってしまう。


「立てますか?少し先にアレクを車で待たせてます。

もし歩けないなら抱き上げますが」


「あ、歩けます!」


冬真の表情はずっと笑みも無く、何か怒っているようで朱音は慌てて声を出し咳きこむと冬真の目がすっと細くなり、


「とりあえずその抱えているゴミ袋を渡して下さい、捨てたりしませんから。

そして声は出さないで」


そういうと問答無用でゴミ袋を取り上げ小脇に抱えると、朱音の身体を支えながらゆっくりと立たせて再度毛布で朱音を頭から包み腰に手を回しがっちりと掴んで歩き出した。

朱音は毛布がフードのようになって自分の足下が何とか見えるだけ。

外はサイレンの音や騒ぐ人々の声が聞こえているはずなのに、自分のめまぐるしい状況に感情が追いつかない。

少し歩いた先にあった車のドアが開いて、冬真は朱音を先に座らせ隣に冬真も乗り込むとすぐに車は動き出す。

冬真はスマートフォンを出して健人に電話をかけ、状況と要件を伝えて電話を切ろうとしたら肩に毛布を被ったままの朱音がよりかかり、小さな寝息が聞こえてくる。

冬真は朱音が寝てしまったのを見てため息をつくと、もう一カ所に仕方なく電話をかけた。


「女性の人手を貸して下さい。それと着替えを一式。

えぇ、先日の件手伝いますよ、仕方がありません」


電話を切ってほどなくして洋館の駐車場に着けば、健人が外で待っていた。

後部座席のドアを開けてアレクと健人で抱えて朱音が以前使っていた部屋に運ぶと、今度は洋館のベルが鳴りそこには若い女が二人、荷物を持って立っていた。