横浜山手の宝石魔術師


朱音のマンションの付近は何台もの赤い大きな消防車が道路一杯に並び、そこを多くの野次馬でごった返していて車は途中で道を阻まれた。


「アレクはどこかに車を。僕はここで降ります」


冬真が車を降りると焦げ臭い臭いが鼻をつき、野次馬がスマートフォンで写真を撮りながら興奮気味に盛り上がっている。

冬真はそんな人間達を横目に路地裏を進み朱音のマンションの近くに来て見上げれば、マンションの一室から火が出たのか、ベランダもそしてその上の階まで火が伸びたことがわかるように白かったはずの壁が真っ黒になっている。

そしてその火の出ていたと思われる部屋は朱音の二つ下の階の部屋で、朱音のベランダの様子はわからないが、放水が未だに続き周囲の地面には大量の水が流れている。

近くに何台か救急車が止まっていて、周囲に怪我をしたような人、運ばれている人を見て冬真はその中を足早に探しながら鼓動が早まる。

自分の頭に放水された水が飛び散って濡れているの事など気にもせずに。

マンションの裏手に停まっている救急車の後ろで毛布を被ってうずくまり、救急隊数名に囲まれている一人の姿が目に留まった。


「朱音さん!!!」


大きな声、そして聞き覚えのある声に、朱音は顔を上げ周囲を見回す。

そこにはロングコートの冬真が走ってこちらに向かってくるのを、朱音は訳がわからずただ見つめていた。


「朱音さん!無事ですか?!怪我は、どこか怪我をしたんですか?!」


大きなゴミ袋を抱えて全身ずぶぬれでうずくまっている朱音が呆然と冬真を見上げていると、すぐ側にいた救急隊員が冬真を不審そうに見る。


「あなたは?」


「吉野と言います。朱音さんの身内でここのオーナーと知り合いです」


「本当ですか?」


冬真の言葉を救急隊員が朱音に確認すると、朱音は戸惑いながらも頷いた。


「あの、朱音さんは」


「避難の際に煙を少し吸い込んでしまったようですが会話も出来ますし大丈夫だと思います。でも念のため後日病院で診てもらって下さい。

今は水を被って身体を冷やしているので温かい場所で着替えられると良いのですが」


「わかりました。彼女は元々我が家にいましたので連れ帰ります」


冬真が救急隊員にそう言い切り、朱音は驚き声を出そうとして咳き込んだ。