横浜山手の宝石魔術師


何か言いたそうなのを我慢している朱音の横顔を冬真は気づきながらもゆっくりと話し始めた。


「・・・・・・あの魔術師が話したことは嘘ではありません」


思わずぐっと奥歯を朱音は噛みしめる。

出来れば嘘だと言って欲しかった。

おそらく自分で見た夢が現実になっていく事を朱音は感じていた。


「僕が独自に動いている案件があり、あの魔術師の本来の目的、所属しているメンバーなどをあぶり出すため様子を伺っていました。

彼女の父親に接触していることも把握していましたし、朱音さんがここに初めて来たときおそらくトミーが探している降霊術の依り代になれる素質があることに気づき、あなたをここに呼んだのです」


『君の存在価値は無くなった』


夢の中だったのに、冬真が自分に言った言葉の意味を伝えられているのだとわかる。


「彼らが言うように僕はとても魔術師らしいと思っています。

ですから朱音さん」


朱音はこちらを向くように言われているのをわかりながら、下を向いて必死にそれにあらがう。


「僕はきっとまた、貴女に同じ事をしてしまうでしょう」


カウントダウンが始まっている。朱音はその怖さに必死に耐えていた。


「だからここに住むことはもうやめたほうが良い」


思わず朱音は唇を噛みしめる。

突き放さないで、お願いだからここにいさせてと訴えたいのに声を出せない。


「・・・・・・以前住んでいたアパートと同じ家賃の部屋を、知り合いのオーナーに用意してもらいました。

朱音さんの会社からも近いですし、セキュリティもしっかりとしたマンションです。

僕が勝手にお願いしていることです、引っ越し費用など全て持ちますので安心して下さい」


ずっと冬真の声は何の動揺も無く、穏やかで、それが朱音には一切拒否することは出来ないのだと理解させる。

でもどうしても言いたかった。