横浜山手の宝石魔術師



『私をおびき出すためにあの男が誤解したまま放置し、降霊術の依り代になる娘を確保していた。

そして私にはまるで味方のように接触しておいて、最悪二人を犠牲にしてまで私を捕まえようとした君の魔術師としてのプライドに敬意を表するよ』


そんな猫の言葉に、トミーは声を震わせた。


『何を言ってるんだ?

娘の死の真相を解き明かすために、依り代になる娘に我が娘を降霊させて娘を殺した人間を聞き出すんじゃ無かったのか?

そのために私に何度もメールをくれたじゃないか。

君だってあの子の死を嘆いていただろう?あの子の思いを知っていただろう?!

冬真!君は娘を愛しているから動いていたのでは無いのか?!』


叫ぶトミーに冬真は氷のような青い目を向ける。


『僕は一度もあなたにメールを送ったことはありません。

電話で話したときも何もそのことを話したことはありませんが』


その答えに、トミーは混乱していた。

電話で何も話さなくても、メールでは電話では他の者がいるので話せなかったと降霊術を進めよう、彼女のためにと言う冬真の言葉に何度も救われていたのだ。

急に仕事が入ったが、先に儀式の用意をしてあること、娘をここに連れてきて欲しいという冬真からのメールを受けてトミーはその通りに行動した。

それが先ほどの言葉が本当ならば、冬真に利用されただけで娘の死の真相を知ることは出来ない。

たった一人の娘を殺した人間を抹殺できるのなら悪魔に魂を売り渡しても良いと思っていた。

だがこれでは何一つ解決しない。

がくりと床に跪くと、地面から不気味な手が何本も湧き上がりトミーの足を掴んだ。


『うわぁぁぁ!!』


パニックになるトミーを猫は満足そうに眺める。


『ふむ、一応術を発動する第一段階には進むようだ。

召喚後あの娘を使えないのは残念だがまぁ方法はある。

君が裏切る可能性は考えていたとはいえ目と手まで持って行かれたのは誤算だったが、代償を払う分希望のものが召喚できるかもしれないな。

さてそろそろお暇しようか。では、またいつか』


すぐに冬真が宝石を埋め込んだ細いナイフを何本も投げつけたが、それは既に消えた猫の血の上に刺さった。

突然、既にいないはずのあの猫の声が部屋の中で聞こえる。


『君が契約を欲しているモノと再会できることを祈っているよ』


冬真は空中を一瞥した後、床に転がされたままの朱音の側に来てしゃがみ、足と腕を縛っていたひもをナイフで切り落とす。

朱音は強ばった表情のまま冬真に顔を向けているが、冬真は朱音の口を覆う布を取り外しても一切朱音を見ようとはしない。