「……そう。それは考えてしまうわね」

 数日後の日曜日。

 果歩は実家に帰っていた。

 一通り話を聞いてくれた母は、しばらく黙って、それだけ言った。

 果歩はこんな反応をさせてしまったことに、申し訳なくなってしまう。

 でもこんなこと、独りで抱えていいことではない。

 それに、このままでいるわけにはいかない。

『どちら』にするにしても、ちゃんと身内に話して決めなければ。

 ……ほぼ確実に、翔が父親である子どもを宿した、なんて。

「ごめん……、私が軽率だったの」

 本当に申し訳なくて、ぽつんと言った。

 うつむくと鼻の奥がツンとした。

 涙が込み上げそうになるけれど我慢する。

 泣いている場合ではない。

 その果歩に、母は優しくなった声で言ってくれる。

「そんなふうに言わないで」

 実家のリビングのテーブルで向き合って話をしていたのだ、向かいから母が、うつむいた果歩を覗き込むようにしてきた。