あの日のことも、すっかり想い出になった。

 想い出になってしまえば、ちくっとした痛みは残るものの、素敵な時間だった、という気持ちのほうが上回るようにもなった。

 元々、いっときのいい夢のような時間だったのだ。

 素敵な想い出をもらっただけでも良いことだ。

 そう思えるようになれた。

 果歩の気持ちは帰国から数日するうちにはすっかり落ち着いて、日常へ戻っていった。

 帰国してそう時間も経たずに出社することになってしまったから、少し疲労が残っているのは感じたけれど、それでも仕事に行った。

 ハワイでの想い出を話し、お土産を配り、明るい顔に戻った果歩に、周囲も安心してくれたようだった。

 実家の両親や友達にもお土産を渡すために、会ったり、訪ねていったりして、皆に「良かったね」と言ってもらえて、果歩は本当に元カレの件から立ち直ったのだと実感した。