食事がすべて終わって、また翔のエスコートでレストランを出た。

 ゆっくり過ごしていたので、時間はもうだいぶ遅くなっている。

 同じ階にバーもあったけれど、もうシャンパンを二杯も飲んだのだ。

 それに、なんにしろ明日には今度こそ発たないといけないのだから、これ以上飲むのもためらわれた。

 よって部屋に向かうことにする。

 エレベーターに乗って、数回下だという宿泊用の階へ降りて、廊下を歩いて……一部屋を示された。

「ここだね。開けるよ」

 懐からカードキーを取り出して、翔がピッと音を立ててロックを解除した。

「お邪魔します……」

 小さく言いながら踏み込んで、廊下を歩いてドアを開けて、果歩は目を丸くしてしまう。

「わぁ……!」

 メインルームはとても広く、十畳以上あるようにも見えるくらいだ。

 大きな窓があって、もちろんオーシャンビュー。

 今は暗い海と、街の灯かりが見えたけれど、朝になれば輝く海が見えるのだろう。今から楽しみになってしまう。

 ドアがいくつかあった。

 バスルームやトイレに続いているだろうドアは廊下にあったから、きっとベッドルームなどだろう。

 でもベッドルームに続くなら、ドアはひとつだろうに。

 果歩はそこでちょっと不思議に思ったのだけど、それを口に出す前に、ふわっとあたたかな感触に背中を覆われていた。

 シトラスのような香りが、ふわりと鼻腔に届く。

 背中があたたかい、優しい腕で包まれている……。

 実感して、果歩の体が、かっと熱くなった。

 翔に抱きしめられたことを、体全体で実感する。