「とっても美味しかった!」

 すべて食べ終えて、お腹もいっぱいになった。

 果歩は明るい声でそう言うことができて、翔もほっとしたようだ。

「それは良かった。気に入りの店だから、果歩さんに喜んでもらえて嬉しいよ」

 そんなふうに言ってくれる。

 それでお会計を呼ぶことになった。

 オーダーに使うのとは違う端末を持ってきたのは、さっきのサム。

 果歩は財布を取り出そうとしたのだけど、それを制して、翔がポケットからカードを取り出した。

「これで頼むよ」

 流れるようにサムに差し出して、サムも心得ているとばかりに受け取る。

「カシコマリマシター」

 カードを端末で手続きしはじめたけれど、慌てたのは果歩である。

 これでは奢ってもらうことになる。

 別に付き合っているひとではないし、いや、そもそも交際していても果歩は『男性が払うべき』という思考ではないし、気が引けた。

「す、すみません! 現金でいいかな!?」

 あたふたと翔に差し出そうと財布を開けたけれど、半ば予想していたように制されてしまった。

「いいよ。俺が誘ったんだから、俺が出すものだ」

 堂々と、しかも笑顔で言われてしまっては押し付けられない。

 果歩は財布を開けかけた手を止めるしかなかった。